概要
近年のFMシリーズはハイプレス・ハイラインを採用したゲーゲンプレスと呼ばれる戦術が最も結果を残しやすいとされています。ゲーム内にも同名のプリセット戦術が複数用意されており、初心者でも簡単にゲーゲンプレスの戦術を使用することができます。また、Football Managerの戦術検証サイト「FM-Arena」には様々なフォーメーションの戦術が投稿されていますが、そのほとんどはゲーゲンプレスに近いスタイルを採用しています。
本記事では、プリセットのゲーゲンプレス戦術とFM-Arenaのランキング上位戦術を比較し、良い成績を残しやすい戦術について考察します。
テスト環境
プレミアリーグ20クラブとEFLチャンピオンシップの24クラブを合わせた計44クラブを1つのリーグとし、テストを行います。また、能力値の編集や固定にはFMRTE等のソフトを使用します。
詳細は以下のとおりです。
- パッチ24.4のマッチエンジンでテスト
- パッチ24.3のデータベースでテスト
- テストリーグのうち4クラブの戦術を選択戦術に固定
- テストリーグの全クラブに補強禁止処分を適用
- 全ての選手は移籍をしない
- 全ての選手は怪我をしない
- 全ての選手の能力値を凍結
- 全ての選手のフィットネス・マッチシャープネス・士気を最大値で凍結
- 全ての選手の環境適応・プロ意識・野心・忠誠心・プレッシャーを20で凍結
- 全ての選手の安定度を20、重要な試合を10で凍結
- 全ての選手のプレイ特性を削除
- 戦術を採用したクラブのレギュラーの選手は出場するポジションの適性を最大値に変更
- 1シーズン86試合を休暇により消化、これを計(86-6)×44=3,520試合でテスト
検証① プリセット vs FM-Arena
使用する戦術
4231と424の2つのフォーメーションでプリセット戦術とFM-Arenaの上位戦術をテストします。(1)と(2)はプリセット戦術、(3)と(4)はFM-Arenaの上位戦術です。
(1)Preset 4231 Gegenpress
(2)Preset 424 Gegenpress
(3)Arena 4231 (One Shot V22)
(4)Arena 424 (Problem Solvin V24)
結果
4つの戦術を前述の環境でテストしました。勝点等の平均値は下表のとおりです。
・全44クラブ
戦術 | 得点 | 失点 | 差 | 勝点 |
---|---|---|---|---|
(1) Preset 4231 | 63.4 | 58.1 | 5.3 | 55.7 |
(2) Preset 424 | 69.2 | 63.9 | 5.3 | 55.3 |
(3) Arena 4231 | 91.6 | 50.7 | 40.9 | 73.2 |
(4) Arena 424 | 85.4 | 48.5 | 36.9 | 71.2 |
・Premier League 20クラブ
戦術 | 得点 | 失点 | 差 | 勝点 |
---|---|---|---|---|
(1) Preset 4231 | 79.6 | 43.4 | 36.2 | 73.0 |
(2) Preset 424 | 87.4 | 44.4 | 43.0 | 75.2 |
(3) Arena 4231 | 109.4 | 37.2 | 72.2 | 87.3 |
(4) Arena 424 | 103.3 | 34.5 | 68.8 | 87.3 |
・Championship 24クラブ
戦術 | 得点 | 失点 | 差 | 勝点 |
---|---|---|---|---|
(1) Preset 4231 | 50.0 | 70.4 | -20.4 | 41.4 |
(2) Preset 424 | 54.0 | 80.2 | -26.2 | 38.7 |
(3) Arena 4231 | 76.8 | 62.1 | 14.7 | 61.4 |
(4) Arena 424 | 70.5 | 60.1 | 10.3 | 57.8 |
全ての表で(1)(2)よりも(3)(4)の方が好成績となりました。したがって、FM-Arenaの上位戦術はプリセットゲーゲンプレスよりも良い成績を残しやすいと言えます。検証の都合上、全ての選手のコンディションを常に最高の状態に維持している点については留意する必要がありますが、それでもここまで顕著な差が出るのは予想外でした。
テスト結果の詳細はスプレッドシートにもまとめています。クラブごとの勝点を確認したい方はこちらからご覧ください。
検証② 戦術スタイルの影響比較
使用する戦術
戦術の効果はフォーメーションや選手の役割だけでなく、戦術スタイル(メンタリティーや攻撃の幅)や個別指示(クロス頻度やパスのリスク度)によっても変わります。
検証②では、戦術のどの要素が結果により影響を及ぼすかについてテストします。検証にあたって、選手の役割と戦術スタイルの組み合わせが異なる4231の戦術を4つ用意しました。
(1) Preset x Preset
選手の役割 → プリセットゲーゲンプレス
戦術スタイル → プリセットゲーゲンプレス
検証①の(1)と同じ戦術です。
(2)Preset x Arena
選手の役割 → プリセットゲーゲンプレス
戦術スタイル → FM-Arena
プリセットゲーゲンプレスから選手の役割はそのままに、戦術スタイルをOne Shot V22と同じものに変更しました。また、戦術をよりArenaの戦術に近づけるために、全ての選手に「思いっきり当たれ」の個別指示を追加しています。
(3)Arena x Preset
選手の役割 → FM-Arena
戦術スタイル → プリセットゲーゲンプレス
One Shot V22の戦術スタイルをプリセットゲーゲンプレスと同じものに変更し、個別指示を全て削除しました。
(4)Arena x Arena
選手の役割 → FM-Arena
戦術スタイル → FM-Arena
検証①の(3)と同じ戦術です。
結果
(2) Preset x Arenaと(3) Arena x Presetを前述の環境でテストし、検証①でテスト済みの(1) Preset x Presetと(4) Arena x Arenaと比較します。勝点等の平均値は下表のとおりです。
・全44クラブ
戦術 | 得点 | 失点 | 差 | 勝点 |
---|---|---|---|---|
(1) Preset x Preset | 63.4 | 58.1 | 5.3 | 55.7 |
(2) Preset x Arena | 70.6 | 53.6 | 16.9 | 62.4 |
(3) Arena x Preset | 75.7 | 59.1 | 16.5 | 62.3 |
(4) Arena x Arena | 91.6 | 50.7 | 40.9 | 73.2 |
・Premier League 20クラブ
戦術 | 得点 | 失点 | 差 | 勝点 |
---|---|---|---|---|
(1) Preset x Preset | 79.6 | 43.4 | 36.2 | 73.0 |
(2) Preset x Arena | 87.5 | 38.1 | 49.4 | 79.5 |
(3) Arena x Preset | 93.5 | 42.7 | 50.8 | 81.1 |
(4) Arena x Arena | 109.4 | 37.2 | 72.2 | 87.3 |
・Championship 24クラブ
戦術 | 得点 | 失点 | 差 | 勝点 |
---|---|---|---|---|
(1) Preset x Preset | 50.0 | 70.4 | -20.4 | 41.4 |
(2) Preset x Arena | 56.5 | 66.6 | -10.1 | 48.2 |
(3) Arena x Preset | 60.8 | 72.8 | -12.0 | 46.7 |
(4) Arena x Arena | 76.8 | 62.1 | 14.7 | 61.4 |
選手の役割を変更した場合と戦術スタイルを変更した場合の勝点の差は同程度でした。このことから、戦術スタイルは選手の役割と同じくらい戦術に影響を与えると言えます。戦術作成時は選手の役割に意識が偏りがちですが、理想の戦術を体現するためには戦術スタイルや個別指示にも工夫が必要です。
強い戦術スタイルとは
FM-Arenaの上位戦術の99%は以下の戦術スタイルを採用しています。すなわち、以下の戦術スタイルがFM24のマッチエンジンにおいて最適解であることを意味します。
ポゼッション時
トランジション時
非ポゼッション時
強さを追い求めるとハイプレスハイラインが正義となってしまい、プレイヤーに工夫できる余地はほとんどありません。ただ、裏を返せば、強い戦術スタイルを採用することで最低限の成績は担保されるので、その分選手の役割を自由にアレンジすることができます。
上は筆者が作成した戦術です。FM24のマッチエンジンでは良い成績を残しづらい3バックのフォーメーションを選択し、かつ比較的ピーキーな役割であるリベロを採用しています。戦術スタイルや個別指示はFM-Arenaの上位戦術の模倣で個性に欠けますが、代わりに選手の役割や配置で味を出しています。
複数の個別指示を追加している役割もありますが、これらもFM-Arenaではよく見られる組み合わせです。
この戦術を24/25シーズンデータのウェストハムでテストしました。結果は勝点93でリーグ優勝。前線3枚と中盤2枚にクロスを集め、116得点を記録しました。このように、特殊なフォーメーションでも強い戦術スタイルを採用することで良い成績を残す可能性があります。
まとめ
- FM-Arenaの上位戦術はプリセットゲーゲンプレスよりも良い成績を残しやすい
- 戦術スタイルは選手の役割と同じくらい戦術に影響を与える
- 特殊なフォーメーションでも強い戦術スタイルを採用することで良い成績を残す可能性がある
FM25ではゲームエンジンが変わり、戦術作成のアプローチもこれまでの作品から大きく変化することが予想されます。次作でも引き続き戦術に主眼を置いた投稿をしていこうと思っていますので、よろしければブックマークまたはXのフォローをよろしくお願いします!
鎌田を王様に据えたアシンメトリー戦術でプレミア2位 #FM24 pic.twitter.com/VrtBPOEPaB
— Abel Asano (@abelasano) 2024年9月28日